先週、在日コリアンラグビー界の父ともいうべき全源治先生が逝去されたとの訃報を知人により伝え聞きました。 去る3月初旬、東京の葬儀場で多くの在日ラグビー関係者や先生を師と仰ぐ「門弟」たちが先生との永別を惜しみながら告別式がしめやかに執り行われたそうです。 折しも、全先生が数十年前に蒔かれた在日ラグビー界の種が着実に芽吹き、花開き、そして日本ラグビー界にどっしりと根を下ろた証左ともいえる「60万回のトライ」の上映がスタートしたこの時期にご逝去されたことに、在日コリアンラグビー界と先生との強い繋がりと絆を感じます。 先生が逝かれる前にこのドキュメンタリー作品をご覧になられたかどうかわかりませんが、昨今の大阪朝高ラグビー部をはじめとする在日ラガーマンの活躍ぶりに関しては亡き先生もさぞ喜んでおられたことでしょう。 私自身、先生に初めてお目にかかったのは大阪朝高ラグビー部時代の中央大会試合会場、朝鮮大学の決勝戦直後のグランドサイドでした。 試合観戦されていたある中年の方が、優勝直後に円陣を組んで私たちにとっては鬼監督であった大阪朝高初代監督、金ヒョニ先生からの最後の「叱咤」話を聞いていた際、「強いチームだな。今すぐ朝大チームと試合しないか?」と慈愛に満ちた表情で冗談交じりに金監督にお声掛けなされました。その方こそ全源治先生だったのです。 怠け者であった私は朝大時代にラグビー部には所属せず、直接先生のご指導を受けることはありませんでしたが、第2グランドでの練習や同級生の朝大ラグビー部員たちの試合で、その熱血指導ぶりはよく拝見しておりました。 我が師、金監督はじめ全先生が手塩に育てた朝大卒業生=第1世代門弟たち数人が誓った言葉とおりに、各地の朝高でラグビーというスポーツを根付けるため腐心し、念願の中央大会の開催まで至った教え子たちの奮闘を親のごとく頼もしく見つめるまなざし、その温厚な表情と佇まいは当時のチームメイト全員が鮮明に記憶しています。 先生の訃報に接し、あらためて書棚にある全先生の一代記「タックルせえー!」を読み返してみました。 ラグビーとは無縁の我が息子にとっても愛読書の一つですが、そこで詳細に綴られている朝鮮大学監督時代に育てた数名の卒業生たちが「門弟第1世代」であるとすれば、私は1.5世代、今の朝大、朝高の選手たちは孫と いうべき第2、第3世代といえるでしょう。 在日ラグビー界のカリスマ、生みの親として先生の功績は計り知れず、在日スポーツ史、そして同胞ばかりでなく全先生を知る多くの日本のラグビー関係者やファンたちにとっても特別な存在として永遠に語り継がれることでしょう。 天空の高みから、これからも続く孫たちの健闘を見つめ続けてくださることでしょう。 3月15日から上映される「60万回のトライ」には、単なるOBとしてなく、全先生を偲ぶ特別な感謝と感慨の意味も込めながら鑑賞したいと思います。 전원치선생님, 명복을 충심으로 빕니다. 必須 2000文字以内 [bbs:youtube:(Youtubeの動画ID)]と書くとYoutubeの動画が貼れます。(例:[bbs:youtube:OQThUAQ0UN0])